子どもの歯並びが気になっている人は、何歳から歯科矯正ができるのか考えたことはないでしょうか。子どもの矯正は早ければよいというものではなく、症例によって適切な時期があります。
この記事では、子どもの矯正を始める時期や歯列矯正のメリット、デメリットについて紹介します。子どもの矯正が気になる人は、参考にしてください。
子どもの矯正はいつから始める?
子どもの歯科矯正を始める時期は、2つあります。乳歯から永久歯に生え変わる時期と、永久歯にすべて生え変わった後の時期です。
早めに矯正を始めることで、矯正期間が短くなる可能性があります。時期別の矯正方法について詳しく解説します。
混合歯列期(一期治療)
混合歯列期は名前のとおり、乳歯と永久歯が混在している時期の治療です。一期治療とも呼ばれ、5〜12歳頃までに行います。
混合歯列期の治療目的は、顎の成長のコントロールです。骨の成長を利用し、顎を拡大することで、歯が並ぶスペースを確保します。
混合歯列期に治療が完了すれば、永久歯列期の治療が不要となり、抜歯を避けられる場合もあります。
取り外し式の装置を使用する場合は、使用時間を適切に守りましょう。装着時間が短くなると、期待した治療効果が得られない場合があります。
永久歯列期(二期治療)
永久歯列期は、12歳以降の永久歯が生えそろってから行う治療のことです。
永久歯列期の治療は、成人の歯科矯正と同様にワイヤーやマウスピースなどの装置を使用します。永久歯を装置によって移動させて、歯並びを整えます。
混合歯列期に治療していなくても、永久歯列期から歯科矯正を始めることも可能です。しかし、症例によっては歯を並べるスペースを確保するため、小臼歯などの抜歯が必要になる点がデメリットです。
中学生や高校生になると部活や習い事などで忙しく、通院時間の確保が難しくなる場合もあります。
早期矯正が必要な子どもの歯並び・噛み合わせ
歯科矯正は、早く始めればよいというものではありません。年齢や発育状況によって、治療方法は異なります。
しかし、早期の矯正治療が必要な場合もあります。早期矯正が必要な歯並び・噛み合わせは、以下のとおりです。
- 受け口
- 出っ歯
- 開咬
- ガチャ歯
受け口
受け口は、上の歯よりも下の歯が前に出ていて、噛み合わせが上下逆になっている状態です。反対咬合(はんたいこうごう)とも呼ばれます。前歯の傾斜が原因の場合と、骨格の異常が原因の場合があります。
見た目を気にする人もいますが、噛み合わせや顎への負担も問題です。発音に支障が出る場合もあり、特にサ行の発音が難しくなります。
思春期になると下顎の成長に伴い、受け口が悪化する場合があります。受け口の場合は、早めに矯正歯科を受診しましょう。
出っ歯
出っ歯は、上の前歯が下の前歯よりも大きく前方へ出ている状態です。見た目にコンプレックスを感じる人もいます。口が空いている状態になるため、鼻ではなく、口で呼吸してしまいます。
口呼吸は口腔が乾くことで虫歯や歯周病のリスクが高まるため、注意が必要です。出っ歯は、口元が膨らむ「口ゴボ」の原因となることがあります。
開咬
開咬(かいこう)は奥歯を噛んでいるときに、上下の前歯に隙間ができる状態です。隙間があると、前歯で食べ物が噛み切れなくなり、胃腸に負担がかかります。
開咬は永久歯が生える時期まで指しゃぶりが続いた場合に起こります。開咬によって引き起こされるリスクは、以下のとおりです。
- 滑舌や発音に影響する
- 顎関節症のリスクが増加する
- 口呼吸になる
開咬は将来歯を失う場合があるため、早期の受診をおすすめします。
ガチャ歯
ガチャ歯は叢生(そうせい)とも呼びます。歯列の一部が飛び出したり、歯並びがガタガタして乱れていたりする状態です。
ガチャ歯は、歯の隙間に食べ物の残りがたまりやすくなります。歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
見た目だけの問題ではなく、噛み合わせの悪さから、顎関節のバランスが崩れる点も問題です。
子どもの矯正におけるメリット
歯科矯正は大人になってからでも可能ですが、子どもの時期に行うメリットがあります。子どもの矯正のメリットについて、詳しく解説します。
顎の拡大がスムーズにできる
子どもの矯正のメリットは、顎の拡大がスムーズにできることです。顎の成長をコントロールしながら治療できるため、抜歯をしなくても歯を並べるスペースがつくれます。
顎の拡大は、拡大床を使用して行います。10歳前後から顎の拡大は難しくなるため、早めに医師に相談してください。
歯が動きやすい
子どもの骨は柔らかいため、歯がスムーズに動きます。弱い負荷でも歯が移動するため、痛みが出にくい点がメリットです。
抜歯のリスクが低い
大人の歯科矯正では、小臼歯などを抜歯する場合があります。抜歯が必要な理由は、顎が小さく、歯を並べるスペースがないためです。
一方、子どもの矯正では拡大床などを使用して顎の成長をコントロールすることで、歯を並べるスペースをつくれる点がメリットです。そのため、大人の矯正に比べると抜歯のリスクが低くなります。
正しい呼吸や発音を促進できる
歯並びが整うことで口呼吸が改善し、鼻呼吸がしやすくなります。口呼吸が改善する理由は、上顎を広げることで鼻腔も広がるためです。
子どもの矯正ではMFT(口腔筋機能療法)が取り入れられる場合があります。MFTはお口周りの筋肉を正しく使うためにトレーニングします。
口腔筋機能を正確に使えるようになると、舌の位置が適切になり、発音の改善が可能です。
矯正装置の違和感に慣れやすい
子どもは適応能力が高いため、矯正装置を装着しても慣れるのが早いです。装置の違和感に数日で慣れる場合もあります。
装置を装着すると、食べにくくなったり、話しにくくなったりする点がデメリットです。違和感に慣れるスピードが早ければ、長い矯正期間も過ごしやすくなります。
トータルの治療費が抑えられる
小児の場合は、歯の移動が成人よりも早いです。混合歯列期から治療を始めると、永久歯列期の治療は不要な場合もあります。
そのため、治療期間の短縮につながり、結果として治療費が抑えられる点がメリットです。
虫歯・歯周病予防につながる
歯並びがよいと食べ物が詰まりにくく、磨き残しが減ります。歯をきれいに保てるため、虫歯や歯周病のリスクが低下する点がメリットです。
乳歯の虫歯を放置すると、永久歯の生え方に悪影響が出る場合もあります。永久歯に生え変わるからと言って乳歯の虫歯を放置せず、しっかりと治療しましょう。
矯正治療中は、定期的に歯科医院に通う必要があります。そのため、虫歯ができても見つかりやすく、将来の歯周病予防につながる点もメリットです。
子どもの矯正におけるデメリット
子どもの矯正は、早ければ小学校入学前から始まります。子どもの矯正におけるデメリットは、以下のとおりです。
- 磨き残しが生じやすい
- 長期的な経過観察の必要性
- 保護者の協力が必要不可欠
磨き残しが生じやすい
取り外しができない固定の装置を使用する場合は、歯磨きの際に磨き残しが増えます。装置の周りは歯ブラシが当たりにくいため、丁寧な歯磨きが必要です。
矯正中の歯磨き方法は、以下を参考にしてください。
- ヘッド(ブラシ部分)の小さい歯ブラシを使う
- 歯間ブラシやフロスを使う
- タフトブラシを使う
ヘッドの小さい歯ブラシは、奥歯の後ろにもブラシが届くためおすすめです。
歯間ブラシは装置の隙間にブラシが届きやすく、フロスは歯と歯の間に通して汚れを落とします。タフトブラシは毛束が1つの歯ブラシで、ブラケットの周りを磨く際に便利です。
子ども自身が歯磨きの重要性を理解し、適切に歯磨きができるように練習しましょう。クリニックでの定期的なクリーニングもおすすめです。
長期的な経過観察の必要性
混合歯列期の治療期間の平均は1~3年、永久歯列期の治療は1〜2年です。永久歯に生え変わってからも治療する場合は、トータルの治療期間が長くなります。
顎の成長が終了するのは15歳ごろです。そのため、混合歯列期のみで矯正を終了した場合でも、経過観察が必要です。後戻りを防止するためにも、定期的な受診が必要になります。
保護者の協力が必要不可欠
子どもの矯正の場合は、保護者の協力が必要です。子ども自身の意識も大切ですが、子どもだけでは治療のスケジュール管理はできません。保護者による歯磨きの仕上げ作業や、装着時間の管理も必要です。
取り外しができる装置は、装着時間が短いと期待した効果が得られないことがあります。
矯正治療は時間も費用もかかるため、子どもが自己管理できるようになるまでは、保護者が協力してください。
子どもの矯正に関するよくある質問
子どもの矯正に関するよくある質問をまとめました。子どもの矯正を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
子どもの矯正で適齢期を逃すとどうなる?
歯科矯正は成人してからでも治療は可能です。しかし、混合歯列期を逃すと顎の拡大ができません。永久歯列期からの治療は可能ですが、症状によって抜歯や外科手術が必要になる場合があります。
子どもが歯並びを気にしたままの状態が長期化すると、コンプレックスを感じたり、自信を失ったりする場合もあります。見た目だけではなく、心理的な影響も考慮しましょう。
子どもの矯正の平均費用はいくら?
子どもの矯正にかかる費用は、混合歯列期で20〜40万円です。永久歯列期は25〜65万円が目安です。
永久歯列期の治療内容は、大人の歯科矯正とほとんど変わりません。そのため、費用も大人の歯科矯正と同じくらいの価格です。ほかに必要な費用は、以下のとおりです。
- カウンセリング費用
- 矯正開始時の検査費用
- 調整料
矯正歯科によって必要な費用が異なるため、初診時に確認しましょう。
子どもの矯正治療は、不正咬合の治療のように歯列矯正が必要と認められる場合は、医療費控除の対象です。
しかし、審美目的の場合は医療費控除の対象外となります。症例ごとに異なるため、診療時に歯科医師に確認してください。
まとめ
子どもの歯科矯正は、早ければよいというものではありません。しかし、顎の成長に合わせて治療する場合は、永久歯に生え変わる前から治療が必要です。
子どもの歯並びが気になる方は、小学生になったタイミングを目安に歯科医へ相談しましょう。
当院は、0歳から100歳まで、家族みんなで安心して通える歯医者です。小児矯正・小児歯科、成人矯正、虫歯・歯周病治療、マタニティ歯科など、幅広い診療を行っています。ご家族の健康と笑顔のために、ぜひ一度ご相談ください。